【独占取材】フィラメントドライヤーのEIBOS創業者Duron、初めて語る——最初の事業は『3Dプリントシューズ』だった

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どうも、YuTR0Nです。

「フィラメントは使う前に乾燥」 

印刷前の準備で今でこそ当たり前になりつつある常識を、2020年の創業当初からずっと専業で追いかけてきたメーカーがあります。そう、EIBOSです。3Dプリンターを買った当初は全然そんなことも知らずにとりあえずやれキャリブレーションキューブだ船だ改造だのリトラクションだのといじりまくってましたが今思えば半分くらいはフィラメント乾かしとけばよかっただけなのでは?というものばかりな気がします。

Cyclopesに始まり、Easdry、Polyphemus、そしてAMSと組み合わせるTetrasへ。業界初を積み重ねて、今年ついに創業6周年。ただあまりEIBOSはそのことを代々的に宣伝することがなくもったいないと思ったので今回は創業者のDuron(Yubo Shen)へチャットにてインタビューを実施!!普段深センで世話になっているお礼に記事にて。

3Dprintopia2025にて(筆者撮影)

私のメールボックスに残ってた当初Cyclopesを買ったときにもらったメール。懐かしいです。出荷先情報を英語でくれたけど日本語で欲しいな!という内容。当時はスパム認定されてて届かないと思ってメール飛ばしたというオチ。

目次

    EIBOSざっくり年表

    時期出来事
    2020/4深圳でEIBOS設立。中国語名は「创构」=“構造の創造者”
    2020/7テスト機30台超を世界中のクリエイターに配布
    2020/9-10Cyclopes Kickstarter。目標の約10倍・約2,000万円(HK$986,297)を1,339人が支援
    2020年末業界初、PTCヒーター搭載のフィラメント乾燥機を出荷
    2021Easdry発売。乾燥剤スロットを業界で初搭載
    2023“焼肉会議”から生まれた360°回転のPolyphemusを発売
    2024年初Tetras/Dyas立項(4室独立制御・チャンバー分割)
    2025〜JRRFに2年連続出展、日本の3Dプリントコミュニティとの交流を拡大
    2026/4創業6周年。アクセサリーのラインアップを継続的に拡充

    オーストラリアから深圳へ——機械エンジニアと3Dプリンティングの出会い

    ——出身はどちらですか?3Dプリンティング業界へ入ったきっかけは?

    Duron:こんにちは、Duronです。中国の北京で生まれ育ちました。私が初めて3Dプリンティングに触れたのは、オーストラリアの大学院に通っていた頃でした。

    当時、グループで緩衝構造を設計して、実際に作り、テストするという授業がありました。クラスには世界中から24人ほどの学生が集まっていたのですが、今思えば、3Dプリンターに一度も触ったことがなかったのは、たぶん私だけだったと思います。

    なので、構造設計が終わったところで、私の出番はほぼ終了(笑)。モデルのプリントは、同じグループのアメリカ人の学生2人が担当してくれました。

    でも、そのとき初めて「3Dプリンティングって面白いな」と思ったんです。パソコンの中にしかなかった設計が、数時間後には手に取れる実物になっている。しかも、それを実際に押したり、壊したりしながらテストできる。問題があれば設計を直して、もう一度プリントして、また検証する。当時の私にとって、この「設計 → 製作 → 検証」のスピード感はかなり衝撃的でした。

    ちなみに、当時は3Dプリンターの操作すらできなかったのですが、その授業では最終的にHD(High Distinction、オーストラリアの大学における最高評価)を取ることができました。今振り返ると、ちょっと面白いですよね。3Dプリンティングとの最初の出会いでは、自分でプリントすることすらできなかったのに、その後ずっとこの業界に関わることになったんです。

    大学院を卒業した後は、3Dプリンティング材料のメーカーに入り、材料のアプリケーションやさまざまなプロジェクトを担当しました。医療分野での応用案件に関わる機会もありました。

    そこで少しずつ気づいたのが、3Dプリンティングの本当の面白さは、「新しい技術であること」そのものではない、ということでした。なぜこの材料ではうまくいかないのか。なぜ条件を変えると結果が安定しなくなるのか。なぜユーザーが説明通りに使っているのに、思ったような結果にならないのか。むしろ、私はそういう問題のほうにどんどん興味を持つようになりました。そして、技術の価値は「どれだけ新しいか」ではなく、現実の問題をどれだけきちんと解決できるかにあると考えるようになったんです。

    この考え方は、その後のEIBOSの製品づくりにも大きく影響しています。私たちが製品を作るときに大切にしているのは、「理論上できるかどうか」だけではありません。実際にユーザーが家に持ち帰って使ったときに、本当に使いやすいのか、本当に役に立つのか。構造は合理的か。長く使ったときにどうなるのか。その性能は、実験やデータできちんと検証できるのか。そういうことを、私たちはスペック表に並ぶ数字以上に大切にしています。

    そして、それが私が今でも3Dプリンティングという業界を面白いと思っている理由の一つです。結局、作ったものが本当に役に立つかどうかは、ごまかせないですからね。

    ——社名のEIBOS = “Excellent Ideas Based On Structure”の由来もその考えから?

    Duron:そうです。私は機械工学の出身なので、機械構造の革新が世界を変えられると、ずっと信じてきました。アルキメデスのてこ、ダ・ヴィンチが残した機械の手稿から、産業革命とその後の電気・自動化まで——機械と構造のブレイクスルーは、そのたびに人類の生活のあり方を変え、改善してきました。

    だから会社の中国語名は「创构(チュアンゴウ)」、“構造の創造者”という意味です。私たちにとって実験とデータは製品の安定性の土台であり、構造設計から本当に優れたアイデアを生み出すことが、追い求めてきた製品の目標です。“Excellent Ideas Based On Structure”は、その理念の英語表現なんです。

    EIBOSという文字の組み合わせ自体は、実は子供の頃に聴いたヒップホップの曲にもインスパイアされています。エンジニアリングの理念と、ちょっとした子供時代の記憶が組み合わさって、EIBOSという名前が生まれました。

    ロゴもこの理念と関係があります。ついでに言っておくと、あれは“怪しいおじさん”ではありません。まだ何のマークか分かっていない人は、ロゴを左に90°回転させて、もう一度見てみてください。(笑)

    コロナ禍の創業——EIBOSの誕生と“0号製品”Cyclopes

    ——EIBOSがひとつのアイデアから本当の会社になった、その契機は何だったんでしょう?

    Duron:これが結構面白い話で。2019年の年末、私は初めて日本に行きました。中国に戻って間もなく、ちょうどパンデミックの爆発にぶつかった。春節休みのあとも、長い間在宅ワークの状態が続きました。

    実はずっと前から「何かやりたい」という思いはあったんです。ただ、実際に形にはできていなかった。コロナ禍の、あの比較的閉じた“半分ひとり”のような生活が、逆にこうした考えを整理し直し、少しずつ具体化する時間をくれたんです。

    その後、このアイデアを何人かの友人に話しました。みんなで議論して、一緒に本当に作ってみようと決めた。規制が徐々に緩和されるのに合わせて、計画を一歩ずつ実行に移していきました。

    2020年4月、私たちは深圳で正式に創業しました。EIBOSはあの非常に特殊な時期に、ひとつの想いから本物の会社へと少しずつ変わっていったんです。

    ——最初の製品がなぜ「フィラメントドライヤー」だったんですか?当時は乾燥の重要性なんて、今ほど認知されていなかったはずです。(実際私も探すのに苦労してようやくCyclopesに出会いました)

    Duron:実は、EIBOSは最初から乾燥機を作るつもりだったわけではなく、3Dプリントシューズのプロジェクトに挑戦していたんです。

    当時、3Dプリントシューズは今ほど広く注目されていませんでしたが、私たちはこの方向の可能性を見ていました。チームでサンプルをいくつも作り、世界的に有名なシューズブランド数社ともコンタクトを取って協議していたんです。

    Duronが当時手がけていた3Dプリントシューズのプロトタイプ
    創業前夜、実際に手がけていた3Dプリントシューズのサンプル

    ところが、テストを重ねる中で、非常に現実的な問題にぶつかった。フィラメントの吸湿が印刷品質に明らかに影響し、シューズサンプルの開発と検証を直接妨げていたんです。

    フィラメント乾燥はまったく新しい概念ではなく、2017年前後には業界で議論が始まっていました。同時にこの領域は、私がオーストラリアで学んでいた頃に触れたテーマとも関連があった。だからチーム内では、かなり早い段階から乾燥の実需と技術的な実現可能性を議論していたんです。

    最初は、すぐに商品化しようとは考えていませんでした。まず自分たちの問題を解決したかった。それでチームは、実際の使用ニーズに基づいて最初の乾燥原型機を作り上げたんです。いま振り返って、あれを“Cyclopes-0”と呼んでおきましょうか。

    あれは完全な事業計画から生まれた製品ではなく、EIBOSが自分たちの問題を解決するために作った最初の道具に近い。でも、その原型機を使い、テストするうちに気づいたんです。フィラメントの吸湿は自分たちだけの問題ではなく、多くの3Dプリンティングユーザーが同じ悩みを抱えていると。こうして、社内テストのために生まれた道具が最終的にEIBOSの最初の製品になり、ブランド全体の本当の起点になりました。

    Cyclopesのプロトタイプ
    Cyclopesのプロトタイプ!
    EIBOSの初代フィラメントドライヤーCyclopes
    すべてはここから始まった、初代Cyclopes

    構造の革新から“業界初”へ——EIBOSの製品とキーテクノロジー

    ——これまでのEIBOS製品を振り返って、当時の業界で「初」あるいは早期の採用だった技術はどれですか?

    Duron:振り返ると、当時の業界では珍しかった、時には初めてとなる技術方式をいくつも採用してきました。私たちのイノベーションは基本的に、実際の使用で遭遇した問題から生まれています。

    例えば、CyclopesはPTC加熱方式をデスクトップ級のフィラメント乾燥機にいち早く採用しました。Easdryでは乾燥剤を収納するスロットを設けた。Polyphemusはスプールを360°回転させることで、固定スプールの受熱ムラの問題に挑みました。そしてTetrasは4つの独立制御チャンバーで、異なる材料を異なる条件で同時に乾燥できるようにしています。形は違っても、背後のロジックは一貫しています。既存の方式が十分に解決していない問題をまず見つけ、構造設計・実験・検証を通じて新しい解決方法を探す、ということです。

    ——それらの技術が生まれた経緯を、具体的に聞かせてください。

    Duron:Cyclopesが生まれたのは2020年の年央あたりです。当時市場の乾燥機は主にPI発熱フィルムを使っていましたが、テストの結果、加熱効率と安定性の面で要求を完全には満たせないと判断し、新しい加熱方式を探し始めました。その後、PTCが性能と信頼性の面でより製品要求に合うと分かり、PTCを軸に何巡ものテストを行って、2020年末、デスクトップ級のフィラメント乾燥機として先駆けて採用したんです。

    Polyphemusは2023年の初めです。単純に温度を上げるだけでは、スプール全体の受熱ムラは根本的に解決できないと気づきました。本当に変えるべきは温度ではなく、フィラメントと熱風の“接触の仕方”だったんです。ある社内の検討会で、誰かがこう言いました。

    じゃあ、焼肉みたいに、スプールを回そうぜ

    Polyphemus開発中の社内検討会にて

    一見シンプルな一言ですが、これが最終的にPolyphemusの360°回転乾燥構造の起点になりました。機械的な運動によってスプールの各部位がより均等に熱風に触れ、ロール全体の乾燥均一性が改善されるわけです。

    ▶ Polyphemusは当ブログでもレビュー済み。気になる方はこちらからどうぞ!

    プロジェクトの初期段階では、Tetrasも1チャンバー構成で設計していました。
    ただ、より幅広い使用シーンに対応するには不十分だと考え、チーム内で話し合った結果、その設計を見直し、最終的にマルチチャンバー構成を採用しました。

    Tetras/Dyasの立ち上げは実はかなり早くて2024年の初めにはもう議論を始めていました。立項ファイルに記された日付は、今でもPCの中に残っていますよ。この製品はマルチマテリアル印刷のシーンにさらに踏み込む必要がありました。出発点は単純な容量アップではなく、「材料ごとに必要な乾燥条件が違う」という問題の解決です。PLA、PETG、TPU、ナイロンでは、温度と乾燥時間の要求がそれぞれ異なります。だからTetrasは4つの独立チャンバーを採用し、材料ごとに温度と時間を別々に設定できるようにして、AMSなどのマルチマテリアル印刷エコシステムと結びつけました。この観点で見ると、Tetrasはもう単体で動く乾燥機ではなく、マルチマテリアル印刷ワークフロー全体の一部になりつつあるんです。

    EIBOSの製品ラインナップ
    Cyclopesから始まったEIBOSの製品ファミリー

    ——製品名には特別な意味があるんですか?

    Duron:この細かい部分、気づいてくれる人は実は多くないんですが、命名に込めたちょっとした遊び心です。ギリシャ神話はとても面白いし、豊かな象徴的意味を含んでいる。例えばCyclopesは一つ目の巨人で、Polyphemusはその一員。Eurusは風の神、Oceanusは海の神です。神話のキャラクターが持つ特徴は、製品の構造や機能、技術理念とつながりを持たせられる。古代ギリシャの人々は神話で世界の運行と創造を説明しました。私たちは現代の技術で、その古い想像力に敬意を捧げたい。EIBOSにとって、一つひとつの名前はただのコードネームではなく、一つの技術、一つの製品理念の化身なんです。

    クレイジーなKickstarter——30台のテスト機と、1,339の約束

    2020年、EIBOSはKickstarterで初のクラウドファンディングに挑戦。1,339人のbackerを集めることになります。

    ——公開前に、30台以上のテスト機を世界中のユーザーに送っていたようですね。その際、チームに一番プレッシャーがかかったのは?

    Duron:いま思い返しても、Kickstarter公開前に30台以上のテスト機を一度に送り出したのは、相当クレイジーなことでした。

    私たちはパートナーに対して、一貫して明確なお願いをしています。欲しいのは最も本音で客観的な評価であって、製品の長所だけを話すことではない、と。だからサンプル発送後のチームは、期待と緊張が入り混じって、ずっと心が宙ぶらりんでした。

    ただ、本当に一番プレッシャーだったのは、どんな評価が来るかではなく、物流でした。あの30数台は、時間がなく、公開日が迫る中で私たちが出せるほぼ全てのサンプル機でした。1台でも税関で止められたり輸送中に紛失したりすれば、すぐに補発できる在庫はまったくない。だから当時一番受け取りたくなかった知らせは「この機能が使いにくい」ではなく、「荷物がまだ届かない」だったんです。ほとんど全てのサンプル機を送り出して、あとは無事に着くのを待つことしかできない——あの感覚は、確かに“一発勝負”に近いものでした。

    幸い、テストに参加してくれたクリエイターは非常にプロフェッショナルで、誠実でした。問題から目をそらさず、価値ある提案をたくさんくれた。

    私たちは彼らの動画を事前にチェックしませんし、評価の修正も求めません。全ての視聴者と同じように、動画が正式公開されて初めて、製品への完全な見解を目にするんです。テスト動画が公開されるたび、チーム全員が時間ぴったりにPCの前に張り付いて、毎週更新の連続ドラマを追うような緊張感でした。(笑)

    動画を見終えたら、指摘された問題と提案をすぐに記録して社内で議論し、改善結果をできるだけ早くテストユーザーに共有する。こうした本音の、時に残酷なほどのテストを何巡も重ねて、最初の原型機を、後に正式にユーザーへ届ける製品へと磨き上げていきました。

    ——Kickstarterの30日間で、一番きつかった瞬間は?

    Duron:あの30日間、気を抜けた日は1日もありません。一番緊張したのは初日の夜。徹夜でした。誰も家に帰らず、オフィスでずっと数字を見続けていた。そして翌日、私は丸刈りにしました。前の晩にした賭けに負けたからです。賭けの内容は……言わないでおきます(笑)。

    苦しかったのはやはり物流でしょうか。物流に関しては本当に経験が足りていなかった。経験のほとんどは、例の先に送った30数台のサンプル機で得たものでしたから(笑)。

    ——最終的に目標の約10倍、98万香港ドル(約2,000万円)超が集まりました。率直にどんな気持ちでした?

    Duron:正直、感動している時間なんてまったくなかったです。プロジェクト終了の日にみんなで食事をして、酒を飲んで、ひとしきり盛り上がった。でも熱く乾杯した翌日には、もう全員が生産に戻っていました。全員分かっていたんです。終わったのは“Webページ”であって、本当の“プロジェクト”はここからが本番だと。

    ——EIBOSは「Kickstarterの配送完了まで他チャネルで販売しない」を守り抜きました。当時、このルールを破るメーカーは少なくなかったのに、なぜ?(バックしたのに届く前にAmazonで販売するケースなど、今でもありますね)

    Duron:Kickstarterはかなり昔から知っていて、自分でもいくつかのプロジェクトをbackしてきました。名前の通りなんですよ。KickとStarter。Kickするのはマーケットで、支えるべきはStarterたち。良いプロジェクトや製品がそこから頭角を現すには、backerの支持が欠かせない。

    どんな社会や組織にも、それぞれのルールがあります。ルールの縁を歩けば、往々にしてより高い利益が得られる。それでも私たちは、ルールを守る側でいたい。同時に、プロジェクトの初期に支えてくれたbackerたちを大切にして、その権益を保証したかった。彼らがいなければ、今日のEIBOSは違う姿になっていたかもしれません。一歩引いて言えば——他人のことは、永遠に他人のこと。少なくとも、うちにはうちの底線(ボトムライン)があります。

    ——初回1,339台の生産と配送では、何かトラブルは?

    Duron:初回の生産はかなり綱渡りでした。プロジェクトの組み立て段階で、自分たちに十分な時間と余裕を確保していなかったんです。現実には部品の納入遅延が起きて、生産のリズムが後ろにずれた。でもbackerに約束したのは「キャンペーン終了から2ヶ月での発送」。このままでは高確率で遅延する。チーム内で激しい議論をして、最終的に選んだのは——全量を航空便で直送するという方法でした。輸送を成立させて、自分たちが口にした約束を果たすために。

    EIBOSチームがbacker一人ひとりに宛てて手書きしたカード
    6年前、チームがbacker一人ひとりに宛てて手書きしたカード。Duronのスマホには今もその写真が残っている

    技術とコミュニティ——ユーザーと作るEIBOSの製品進化

    ——先ほど「クリエイターに特定の内容は求めない」と言いました。製品の問題を公開の場で指摘されるのは、怖くないんですか?

    Duron:Key Opinion Leaderにしても、Key Opinion Consumerにしても、頭に付くのは“Key(重要な)”で、その後に続くのはどちらも“Opinion(意見)”なんです。

    意見にはいろいろな種類も角度もあります。「千人いれば千人のハムレットがいる」と言いますよね。でもハムレットは結局同じ一人の人物で、本当に千人いるわけじゃない。製品も同じなんです。

    ユーザーごとに使用環境もシーンも習慣もやり方も違う。だから同じ製品に対して違う感じ方、理解、意見が生まれるのはごく自然なことです。そして彼らが“Key”たり得るのは、高い認知と豊富な経験、製品への理解があるからこそ。自分の実際の使用状況に基づいて、製品ごとに異なる意見を出せる——それ自体が彼らの価値なんです。

    私たちの立場からすれば、もちろんレビューの結果は心配ですよ。あれは一種の“試験”のようなもので、私は子供の頃から試験が苦手でしたから。でも、試験が怖いからといって、受けないわけにはいかないでしょう?

    私たちにできるのは、開発の過程でできる限りの準備をして、社内で厳しめのテストを行うこと。製品が本当にクリエイターとユーザーの手に渡ったあとは、皆さんに採点してもらい、成績をつけてもらう。その成績は、私たちにとって非常に強い参考意義を持ちます。

    皆さんの製品への考えや提案は、真剣に聞きます。本当の声を聞いて初めて、製品のどこに問題があるのか、次にどの方向へ改善すべきかがはっきり分かるからです。

    私たちは、“真実であること”がとても重要だと考えています。それは自分たちへの責任であり、協力してくれる仲間への責任であり、何よりユーザーへの責任です。その前提で、本当の意見でありさえすれば——肯定でも、批判でも、提案でも——全部真剣に受け止めます。

    EIBOS 6周年にクリエイターから届いたお祝いメッセージ
    6周年の際にクリエイターたちから届いたお祝いメッセージ(一部)

    ——EIBOS製品には、ユーザーが自主的にMODや変換アダプタを設計してモデル共有サイトに公開する文化があります。コミュニティ主導の改良や互換性拡張を、どう見ていますか?

    Duron:まず、そうしてくれる皆さんに感謝しています。私たちの目的も、多様な使用シーンのニーズに製品が応えられることですから。MODはある意味で、製品全体をより完全なものにしてくれています。

    私たちは“3Dプリンティングの氷河期”からこの技術に触れてきました。オープンソースコミュニティがなければ、みんなで一緒にこの技術を“遊ぶ”ことがなければ、今の3Dプリンティングの急速な発展はなかったと思います。同時に、私たち自身もコミュニティの一員であり、3Dプリンティングの実際のユーザーです。製品の上でみんなが交流できるのは、本当に素晴らしいことです。

    すごいMODを見かけたら、たいてい作者と話をします。うちの製品のこと、今後への期待や機能の最適化について。製品をどんどん良くしていくうえで、これは非常に重要な一環なんです。

    ——ユーザーの意外な使い方は?

    Duron:もちろん、使い道は本当に五花八門(バラエティ豊か)で。「あの日は大雨で靴がびしょ濡れになったけど、Cyclopesに入れたら2時間で乾いた。EIBOS Cyclopesは本当に使える」というお褒めのメールをもらったこともあります。Tetrasのコンポーネントを、プリンター内部のチャンバー加熱モジュールに改造してしまったユーザーもいましたね。

    人類の発展は創造力に支えられています。私は創造というものに、ずっと畏敬の念を持っている。私たちの作った製品が、皆さんにさらなるアイデアをもたらせるなら——それは十分に誇らしいことじゃないですか!

    EIBOSの、次の5年

    ——フィラメント乾燥の領域には、機能の似た製品を出すブランドがどんどん増えています。この変化をどう見ていますか?今後、何で差別化を?

    Duron:6年前、私たちはフィラメント乾燥の領域に最も早く参入したブランドの一つでした。

    業界で最初にPTCをコアの加熱素子に使ったのは私たちです。Cyclopesに採用した当時、市場の同種製品は基本的にまだPI発熱フィルムでした。乾燥チャンバー内に乾燥剤の収納スペースを最初に設けたのも私たちで、その設計はEasdryに最初に載りました。その後Polyphemusで初めてスプールをチャンバー内で回転させ、回転によるより均一な乾燥を実現した。TetrasとDyasでは、このタイプの製品として初めて、独立チャンバーとチャンバー分割へのユーザーの要求に本当の意味で応えました。

    これがEIBOSです。

    この数年、私たちが提案してきた機能や構造は、いまや市場の多くの同種製品の中に見ることができます。言い換えれば、私たちの製品に対する思考の多くが、他のブランドに参考にされ続けているということです。

    もちろん、心から願っているんですけどね——今度うちの製品機能を参考にするときは、先に電話を一本ください。うん、せめて一報だけでも。(笑)

    冗談はさておき、大事なのはいつだって製品への思考です。自分たちの設計が参考にされたからといって、前進をやめることはありません。むしろこれからも製品について考え続け、ユーザーが本当に必要としているものを研究し続け、新しい試みを続けていく。それが、私たちがこの先も貫いていく方向です。

    ——日本市場をどう見ていますか?日本ユーザーのフィードバックで印象深かったものは?

    Duron:日本はとても活発で、とても特徴のある市場だと思っています。

    アメリカのユーザーが「実際の問題を素早く解決できるか、具体的なシーンにすぐ応用できるか」に注目するとしたら、日本のユーザーは一つの技術をより深く研究し、細部の極致を追求し続ける。日本市場の話になるたびに、頭に浮かぶのは日本のJDM文化です。既製品をただ使うのではなく、理解し、改造し、自分に最適な状態に調整していく。この文化は3Dプリンティングの精神にとても近いと感じます。

    2025年からは、JRRFにも2年連続で参加しました(編注: Japan RepRap Festival。手前味噌ですが、筆者が主催している自作・オープンソース3Dプリンターの祭典です)。おかげで日本の3Dプリンティングコミュニティの活発さを、より直接感じることができた。会場には個人クリエイター、エンジニア、一般の愛好家がたくさんいて、みんな真剣に技術の話をしてくれます。

    もう一つ印象深いのは、日本のユーザーは普段は慎重なのに、一度信頼が生まれると、本当に誠実に支えてくれることです。

    以前、ある日本のユーザーからメールをもらいました。私とやり取りしたあとにうちの製品を買ってくれた方で、こう言ってくれたんです。「オーナー自身が自分の製品にこれほど自信を持っていて、業界をこれほど理解しているなら、試さない理由がありません。それに、私自身も本当に良い製品だと思いましたから」。この言葉はとても印象に残っています。彼が買ったのは製品だけではなく、やり取りの中で伝わった自信と誠意への応答でもあった。言語の壁でコミュニケーションが難しいことは確かにあります。でも、率直に製品を紹介し、ユーザーの質問に真剣に答える——その姿勢は言語を越えられるんです。

    日本のクリエイターの友人たちとユーザーの皆さんにも、本当に感謝しています。多くのクリエイターとの関係は、もう一回のレビューや商業案件にとどまりません。長期にわたって本音の使用感を共有してくれて、問題を指摘し、新しいアイデアも出してくれる。私たちも製品・パーツ・技術面でできる限りのサポートをしています。EIBOSにとって日本市場は、単なる販売市場ではありません。製品を捉え直し、技術を検証し、細部を改善し続けるのを助けてくれる、大切なコミュニティなんです。

    JRRF会場のDuron氏
    JRRF会場にて。日本のユーザーと直接言葉を交わすDuron氏

    おわりに

    EIBOSのこの6年を振り返ると、最初は彼らが実際にぶつかったプリントの問題を解決するところから始まり、そこから新しい構造や機能、アイデアを次々と製品という形に変えてきました。その変化の多くは、一度また一度と重ねてきたテストと試行錯誤、そしてユーザーからのフィードバックの中から生まれたものです。

    この6年の間に、フィラメントの乾燥もまた、必ずしも全員が重視していたわけではない問題から、多くの3Dプリンターユーザーや機器メーカーが真剣に考える要素のひとつへと、少しずつ変わってきました。EIBOSにとってそれは、ひとつの答え合わせであると同時に、新しい挑戦の始まりでもあるのかもしれません。今プリンターメーカー各社も乾燥機能付きのAMSなどのマテリアルユニットを出し始めたあたり、ようやくEIBOSに業界が追い付いてきたような見方もできるかもしれませんね。逆に現時点で乾燥ソリューションについて全く触れていない会社はユーザーの知識任せかそもそも蔑ろにしているかのいずれかなので注意しましょう。乾燥せず失敗すれば材料や交換部品は売れますがそれは結局ユーザー離れに繋がります。

    実際のところ、「フィラメントの乾燥」を、あってもなくてもいいオプションだと捉えているユーザーは少なくありません。とくにPLAのような基本的な材料しか使っていない場合、わざわざ乾燥させる必要はないように感じる方も多いはずです。

    しかし、印刷頻度が増えたり開封したストック増加、またPLA以外の素材への挑戦が増えてくると、思いがけないトラブルが乾燥不足なことにだんだん気が付き始めます。糸引き、表面の状態が安定しない、造形品質がばらつく、さらには原因をその場では判断しづらい細かな不具合まで、どれもフィラメントの状態と関係している可能性があります。たとえPLAであっても、環境の湿度や保管条件の影響をまったく受けないというわけではないのです。

    もちろん、フィラメントが湿気を吸いやすいかどうかは、材料の種類や環境の湿度、保管の方法によっても変わります。ただ、より安定した、再現性の高いプリント結果を求めるのであれば、問題が起きてから原因の切り分け手段として乾燥を持ち出すのではなく、「まずフィラメントの状態を整えておく」ことを、少しずつ習慣にしていくべきなのだと思います。キャリブレーションや「最強の設定Tips」を見る前にまずは素材をベストなコンディションにしてからマシンの調整へ。

    そう考えると、フィラメントの乾燥は単なる付加的な選択肢ではなく、長く安定してプリントを続けるための、基礎的な工程のひとつに近いものだといえます。

    そして、同じ問題に目を向ける人が増えてきたいま、本当に大事なのは「その機能があるかどうか」ではなく、それをより安定して、より理にかなったかたちで、そして実際の使われ方により近い形に仕上げられるかどうかです。

    CyclopesからPolyphemus、そしてTetrasへ。EIBOSはずっと、その問いに対する自分たちなりの答えを出そうとしてきました。正直今Cyclopesを買うかというと筆者は買いません。なぜならPolyphemusで改良されているポイントが多いからです。でも既にCyclopesを複数運用している場合はCyclopesで統一して増やした方がオペレーションは楽かもしれません。ケースバイケースですね。

    Duronと話していると、彼はいつも、あまり一般的とはいえない方向から物事を考えたがる人だということに気づきます。多くの場合、彼が最初に考えるのは「この製品がどれだけ売れるか」ではなく、あくまでエンジニアとしての問いです。

    これは、みんなが困っている問題を本当に解決できるのか?

    だからこそ、少し飛躍しているように見える、当初は「ちょっと変わっている」と思われたようなアイデアが、最終的にEIBOSの世代を重ねた製品の中で、新しい構造や機能になってきました。

    そして6周年は、当然ながら終着点ではありません。

    製品ラインとアクセサリーのエコシステムが広がり続けるなかで、「ひとつの具体的な問題を解決する」ところから始まったこのブランドが、次はどんな問題を出発点にして、どんな答えを出してくるのか。おそらくそこが、いちばん期待していい部分なのだと思います。

    フィラメントの乾燥という基礎知識、またフィラメントドライヤーが必要になった時はぜひEIBOSを思い出してみてください。

    EIBOSサマーセール開催中

    現在、EIBOS公式ストアではサマーセールが開催中です!せっかくなので、今回の記事に絡めて個人的なおすすめを3つほど。

    まずはPolyphemus。記事中でも誕生秘話が語られた360°回転乾燥のモデルが、通常¥24,109のところセールで¥16,072と33%オフ。3KGスプール対応の拡張キット付きでも¥17,680です。なお現行のセール対象は、最高80℃まで対応する第2世代仕様。ちなみに筆者宅では現在このPolyphemusが5台以上稼働中。乾燥機デビューにも買い増しにも、この価格なら文句なしにおすすめです。

    そして初代AMSユーザーに激推ししたいのがTetras。AMS 2 Proと違って初代AMSには乾燥機能がないので、AMSの下に置いて4スロットそれぞれを個別の温度設定で乾燥しながらそのまま給送できるTetrasはまさに救世主。ファームウェア連携も本体改造も不要のポン付けで、通常¥35,360のところセールで¥30,538、JPプラグの取り扱いもあります。2チャンバー版のDyasもありますが、日本向けの取り扱いはないので注意してください。筆者宅でもTetrasを2台運用中ですが、ひとつだけ注意点を。フタ開放時の高さが424mmと若干伸びる(閉時は280mm)ので、棚などギリギリの高さに設置している場合は、届く前にかさ上げしておくとGoodです。対応は初代AMSとAMS 2 Proで、AMS liteは非対応。AMS 2 Proの場合は印刷品アダプタの併用で取り付け可能です——アダプターメイン部品は4分割構成ですがもし一体印刷版が欲しい方は連絡してくだされば材料費+αで製作しますのでご連絡ください!

    乾燥したフィラメントの保管には真空バッグのEURUSを。USB給電の小型ポンプ+厚手PA+PEバッグ10枚の基本セットが¥6,267(こちらは通常価格)、バッグ10枚だけの追加なら¥3,052。そして20枚セットは¥9,319→¥8,517、30枚セットは¥12,372→¥10,446と、まとめ買いサイズがセール対象です。「乾燥→真空保管」のループを一度作っておくと吸湿とのいたちごっこから解放されるので、ドライヤーと同梱で送料をまとめられるこの機会にどうぞ。ただわたしはもう諦めて毎回ドライヤーに突っ込むというスタイルを取っています。丁寧な管理しておくにこしたことはないですね。

    セール対象の早見リストはこちら!KRIOS(コールドビルドプレート)は対応プリンタ別にどうぞ。

    EIBOS Polyphemus
    EIBOS SUMMER SALE
    Polyphemus 第2世代(360°回転・80℃)
    ¥24,109¥16,072-33%
    EIBOS Tetras
    EIBOS SUMMER SALE
    Series X: Tetras(4室独立・初代AMS対応)
    ¥35,360¥30,538-14%
    EIBOS EURUS 真空バッグ
    EIBOS SUMMER SALE
    真空バッグ EURUS(ポンプ+バッグ30枚)
    ¥12,372¥10,446-16%
    EIBOS KRIOS for Bambu Lab
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