どうも、YuTR0Nです。
今回はCrealityから共有いただいた資料をもとに、KliTek™ Nozzle Changing Technologyについてまとめていきます。
先に注意書きです。この記事内の数値は、特記がない限りCreality提供資料に基づく参照値です。自分の実測値ではありません。また公式ランディングページURLはまだ共有されていないため、リンクは提供され次第追記予定です。
ここ数年でマルチカラー3Dプリンターは一気に身近になりました。AMSやCFSのようなシステムのおかげで、家庭用でも多色造形を触れるようになったのはかなり大きいです。
ただ、単一ノズルで材料を切り替える方式にはどうしても避けにくいところがあります。前のフィラメントを戻して、新しいフィラメントを送り込んで、ノズルの中に残った材料を押し出す。これを色替えのたびに繰り返すので、印刷時間は伸びますし、パージ材も増えます。色混ざりを避けようとするとさらに捨てる量が増える。マルチカラーは便利だけど、ワイプタワーを見て少し遠い目になるあの感じです。
KliTek™は、その流れに対して別方向から攻めている技術です。材料だけを入れ替えるのではなく、ホットエンドを含むノズルアセンブリ側を切り替える。ここが今回の肝ですね。
KliTek™はツールヘッド丸ごと交換ではない
KliTek™は、ツールヘッド全体を交換する方式ではなく、ホットエンドを含むノズルアセンブリを交換する仕組みです。ノズルアセンブリの重量はフルツールヘッドの約5分の1とされています。

フルツールヘッド交換は構造として分かりやすい一方で、交換部が重くなりがちです。重いものを動かして、毎回きっちり同じ場所へ戻すとなると、それだけで難しくなります。KliTek™は交換する部分を小さくし、必要なところだけを入れ替える考え方です。最近の類似方式だとBondtechのINDXやInfimechのマシンなど。また、ホットエンドのヒーター加熱方式は誘導加熱方式ではなく「直接加熱」とのこと。効率をK2シリーズより高めたセラミックヒーターなどかな?と予想しています。Atomformのマシンは本当にノズルだけなのでまた別カテゴリ、ほかにはエクストルーダー混みでヘッドごと交換するPrusa XLやSnapmaker U1、WonderMaker ZR-Ultra、Flashforge Creator 5など。5/30-31開催のJRRFで見れるマシンも数多くあります。
https://japanreprapfestival.com
ノズル交換は5秒未満、材料交換は15秒未満という説明です。単一ノズル方式で毎回パージを挟む構造と比べると、待ち時間の考え方がかなり変わります。

ここで大事なのは、速く交換できることだけではありません。交換したあと、ちゃんと同じ位置に戻るのか。ノズル交換式のマシンはそこが一番気になります。速くてもズレたら意味がないので。
センサーと位置決めでノズル交換後のズレを抑える
KliTek™搭載機は37個の高精度センサーを備え、そのうち12個がノズルキャリブレーション専用とされています。位置ずれは25ミクロン以内に抑えるという説明です。

複数ノズル式で怖いのは、ノズルごとの高さやXY位置のズレです。特にマルチカラーやマルチマテリアルでは、ズレが外観だけでなく材料同士のつながり方にも出ます。水溶性サポートを使う場合も、モデル側とサポート側の位置が合っていないと、剥がれ方や接触面に影響が出てしまいます。

KliTek™の説明では、軽量かつ剛性のあるフレーム、XYZ三軸の位置決め、FOCクローズドループモーター、Hブリッジモーターを組み合わせ、振動と位置ズレを抑える構成になっています。このあたりはかなり技術盛り盛りですが、ノズルを交換する以上、機械側の安定した繰り返し位置精度をどこまで詰められるかが本当に大事です。


主な仕様を一度整理しておく
数字だけを追うと少し散らかるので、ここで一度まとめておきます。
| 項目 | 数値・内容 | 補足 |
|---|---|---|
| ノズル交換時間 | 5秒未満 | ノズルアセンブリを切り替える方式 |
| 材料交換時間 | 15秒未満 | 単一ノズル式の大きなパージとは発想が異なる |
| ノズルアセンブリ重量 | フルツールヘッドの約5分の1 | 交換部を小さくする設計 |
| 高精度センサー数 | 37個 | うち12個がノズルキャリブレーション専用 |
| 位置合わせ精度 | 25ミクロン以内 | ノズル交換後の再現性に関わる部分 |
| 対応TPU硬度 | 80A、85A、90A、95A | 柔らかいTPUまで視野に入れている |
| 95A TPU流量 | 15mm³/s | S-Drive™との組み合わせ |
| 85A TPU流量例 | 3mm³/s | インソール例として記載 |
TPUまわりがかなり気になる
KliTek™で個人的に一番気になるのは、実はマルチカラーよりTPUです。
TPUは楽しい素材ですが、扱いはなかなか面倒です。柔らかいので経路の中でたわみやすく、摩擦も増えやすい。押し出しが安定しないと、詰まり、アンダー、糸引きがまとめて出てきます。硬めの95A TPUならまだしも、80Aや85Aのような柔らかいTPUになると、普通のコンシューマー機では気軽に使える素材とは言いにくいです。
また湿気に弱いのでその点どのようなアプローチをとってくるのかも気になります。
CrealityはここにS-Drive™ Dual-Drive Technologyを入れています。後方から押す力と前方で引く力を組み合わせる押し引き方式です。フィラメントを長い経路でずるずる引っ張るのではなく、複数点で支えながら送ることで、柔らかい材料の変形と摩擦を抑える狙いですね。さらなる詳細情報公開が待ち遠しいです。

KliTek™は80A、85A、90A、95AのTPUに対応し、95A TPUでは15mm³/s、85A TPUのインソール例では3mm³/sの安定造形ができるという説明です。
業界一般の95A TPUが2〜3mm³/s、85A TPUは他の3Dプリンターでは成功率10%未満かつ約1mm³/sという比較も出ています。ただし、比較対象の機種や試験条件までは細かく明記されていないため、ここは参考として見るのが良さそうです。
それでも、柔らかいTPUを多色、多硬度、多素材で一体造形できるならかなり面白いです。靴なら、ソールは少し硬め、アッパーは足に沿うように柔らかめ、インソールはさらに柔らかめ、という作り分けができます。今までは分けて作って組むしかなかったものを、最初から一体で設計できる可能性が出てきます。
造形例を見ながら考えると、使い道が見えやすい
ここからは印刷サンプル系をまとめて載せます。本文中に1枚ずつ縦に置くと少し重たくなるので、横スクロールで見られるようにしています。スマホなら横にスワイプ、PCなら横方向にスクロールして見てください。




0.4mmと0.8mmを同じ造形内で使い分ける
複数ノズル径を同じ造形内で使い分け可能というのを最初から触れてる点もいいですね。ノズルキットは0.2mm、0.4mm、0.8mmなどのサイズに対応するとされています。
たとえば外壁は0.4mmノズルで細かく、内部インフィルは0.8mmノズルで一気に吐く。考え方はシンプルですが、普通の1ノズル機では印刷中にノズル径を変えられません。
全部0.8mmで印刷すれば速いかもしれませんが、外観の細部は甘くなります。逆に全部0.4mmで大物を印刷すると時間がかかる。外は細かく、中は速く。これが自然にできるなら、マルチノズルの価値はかなり分かりやすいです。
個人的にはここ、かなり実用寄りだと思っています。大型の治具、展示用モデル、ロボットの外装、ケース類など、外観はそれなりに綺麗にしたいけど内部はさっさと埋めたいものは多いので。他社マシンも物理的にはつけれても公式ではソフト側がまだスムーズに対応できていないケースが多いです。
CMYKフルカラーと水溶性サポート
KliTek™はCMYKの4色を層ごとに混ぜ、色の変化を作るフルスペクトラムカラーも打ち出しています。フィラメントの色数に縛られず、狙った色に近づけるという話ですね。最近のトレンドですね。
ここは実際の発色、スライサー側の使いやすさ、色の再現性がかなり大事になりそうです。フルカラー系は見た目のインパクトが強いぶん、思った色にならないと逆に気になってしまうので、どこまで扱いやすく落とし込めているかはぜひ見たいところです。
1つのノズルで水溶性サポート、別のノズルでモデル本体。複雑な中空構造や入り組んだ形状では、サポートを水に溶かせるだけで設計の自由度がかなり変わります。ただサポート材は折れやすい、吸湿しやすいといった話題に尽きないのでその点どうなるか気になるところです。
サポート材を外すために形状を妥協する、という場面はかなりあります。特に内側に入り込むサポートは本当に面倒です。そこを材料側で解決できるなら、医療モデル、教育用モデル、透明外装と内部構造を組み合わせた展示物など、いろいろ遊べそうです。
材料ロスはどこまで減るのか
KliTek™はパージ廃棄をワイプタワー中心に抑えられるという説明になっています。単一ノズル式のように、色替えのたびにノズル内を大きく押し流す構造ではないため、材料ロスを減らしやすいという理屈です。

もちろん、実際の削減量はモデル、色数、材料、スライサー設定でかなり変わるはずです。なのでここも、数字だけで判断するより、同じモデルを複数の競合マシンとKliTek™で出したときにどれくらい差が出るかを見たいところです。
現時点で気になるところ
かなり面白い技術ですが、気になるところもあります。
まずはキャリブレーションの安定性です。25ミクロン以内という説明はかなり攻めていますが、長時間印刷、複数素材、ノズル交換を何度も繰り返したときにどうなるか。ここは実機でないと分かりません。
次にスライサー側です。マルチカラー、多硬度TPU、マルチマテリアル、ノズル径切り替え、CMYK、水溶性サポート。できることが多いぶん、設定が複雑になるとユーザー側の負担も増えます。ハードが良くても、スライサーで迷子になると結局使われなくなるので、プリセットや自動化の作り込みはかなり重要です。
あとはノズルキットの価格と入手性。ツールヘッド全体を交換する必要がなく、交換コストを削減できるとされています。交換部品は消耗品でもあるので、実際の価格と供給はかなり大事です。ポチって何日で届くかも気になりますね。
まとめ
KliTek™は、ただノズル交換が速いだけの技術ではなく、マルチカラーやマルチマテリアルで避けにくかったパージ、待ち時間、材料ロス、TPUの扱いにくさを、構造側から減らそうとしている技術に見えます。
個人的には、マルチカラーよりもTPUと複数ノズル径の使い分けがかなり気になります。柔らかい素材を複数硬度で一体造形できるようになると、靴、インソール、グリップ、クッション、タイヤ系の模型、医療モデルあたりはかなり遊べそうです。
弊ブログでレビューも是非していきたいところです!


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